藁の楯

ホラーめいたアクションスリラー作品

三池監督が創り出している映画は何もホラー映画ばかりではないが、その特色を孕んだ作品が多く見かけられます。ホラーでない作品でないにしても、大部分の作品でグロテスクな死に様が表現されているところは、監督ならではのこだわりなのかもしれません。そうなると監督らしい映画に対する並々ならぬ思い入れがあるのも確認できるわけだが、中には後味がすっきりしない、それこそこんな終わり方で本当に良いのかという結末を迎えている作品もあります。

筆者がこれまで見てきた中ではダントツで悪の教典があげられる、原作でも明確に黒幕が舞台から退場する事無くのうのうと生きているためだ。正直今作を超えるホラー作品は他にないだろうと、そう思っている。ただ中にはいずれは表舞台から退場することが決まっても、最後の台詞で出てきた言葉があまりに衝撃的かつ、見ているもの全てを凍りつかせるだけのシーンを生み出している作品が一つあります。『藁の楯』、そんなタイトルの今作ではとにかく胸糞の悪い話となっている。

どの辺が胸糞が悪いのか、その辺も含めて作品について話をしていこう。

怖い話で涼しくなりたい方へ

作品概要

本作はアクションスリラー作品、といわれていますが個人的にホラー要素も含まれていると考えている。超常的な現象が作中で起きることはないにしても、人間の本質部分に関係する恐怖が表になって顕在し、人間の怖さが垣間見られる作品なのだ。だからこそか、映画をじっと見ていると身も毛も弥立つような感覚に襲われる。そしてタイトルに関してですが、『藁の楯』と題されているのも今作で繰り広げられる展開と大いに関係しています。

そこも含めて簡単にあらすじを紹介しよう。

あらすじ

この男を殺してください、殺してくれれば報奨金として10億円お支払いします

前代未聞の広告が全国3誌に展開され、国民に衝撃が走る。あるべきはずもない宣伝によって報奨金が掛けられたのは、幼女殺害事件の加害者である清丸国秀。彼が殺した少女の中に、報奨金を掛けた経済界の大物である蜷川隆興の孫娘もいた。無残に殺された孫のために掛けた多額の報奨金に国民は目がくらみ、誰もが独り占めしようと清丸の命を付け狙い始める。

日本ではそのような制度が認められていないため、警察は組織としての威信をかけて正当に裁判をするため勾留している福岡から東京まで、清丸を何としても護送することを決意した。そんな清丸を守るため、警察から優れたSPが選出され、更には機動隊なども用意する形で福岡から東京までおよそ1,200kmの道程を進み始める。

しかしその距離はあまりに遠く、そして全国民だけでなく内部からも裏切りの連続となり誰もが信じられなくなる状況にまで追い込まれていくのだった。

全ての国民が敵として

日本でも報奨金が掛けられた指名手配書を見かけることは交番の掲示板で見かけることがあります。けれど今作のように明確な殺意を持って殺してくれと、第三者に依頼する形で多額の報奨金をかけたという事例はない。現代以前の日本であればあったのかもしれませんが、現在では法的・倫理的な観点から問題を孕んでいるためそもそも報奨金を掛けてまでの殺人依頼をすることは許されていません。それだけでも大概だが、問題は提示した相手だ。

作中では経済界の大物が孫を殺された恨みとしてとありますが、もしそんなことを可能にするようであれば大問題に発展します。それこそ国家の威信をも揺るがす事態になっています。なにせ劇中では殺してお金を手に入れるために、別の事件が同時進行で発展するという展開まで起こるほどだ。また似ているから大丈夫と、勘違いから全く関係のない一般人が殺害されてしまった、なんてことにもなっている。物語が進めば進むほど息をつく暇もないくらいに。

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三池監督としては珍しく

監督作品として見ても、三池崇史作という情緒漂う世界観となっている。人が死ぬ瞬間の映像の無常さ、通常想像されるホラーとは違っての怖さを孕んでいて見ている人たちを惹きつけます。さすがにAUDITIONのような根源的な恐怖を演出している作品とは世界は全く違いますが、それでも人間の怖さが感じられるという意味では十分体感できます。

そんな藁の楯ですが、タイトルがどうしてこのように付けられたのかについては見ての通り、誰も彼も信じられない状態で数名のSPが犯人を裁判で正当に裁くため無謀すぎる護送劇が繰り広げられます。けれど周囲は誰も信じられず、辺りを見渡せば全て敵という状態。だからこその藁の楯、あってないような壁として祭りあげられてしまうのです。

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